プロフェッショナルに聞いてみよう!(配線編)

吉村電機

こんにちは!吉村電機です。今回は配線編ということで、各種電線種類や使用の違いによる使い分け方や、配線の仕上がり(見え方)の重要性についてお話していきます。こちらについてはK先生に解説をしてもらいたいと思います。K先生よろしくお願いします。


K先生
はい。よろしくお願いします。今回は配線についてのお勉強となりますが、何かわからないことはありますか?
生徒A
配線とは、電線をつかって製品と機械をつなぐイメージですがあっていますか?
K先生
そうですね。
生徒A
電線の種類がたくさんあるので、どのように使い分けているのか知りたいです!
K先生
では、制御盤の製作に使用する電線の選定基準と注意点、参考の電線種類についてお話してきます。
生徒A
よろしくお願いします!

電線とケーブルの違い

制御盤での使用を前提とします

電線

導体が絶縁体である保護被覆に覆われているもの(絶縁電線)を指します。

ケーブル

主に導体に絶縁を施した一本一本の絶縁電線の上にシース(保護外被覆)を施した電線を指します。また電気を通す目的でなく、光や通信目的とした物もケーブルと指します。

シース

ケーブルの最も外側の被覆のことを指し、絶縁体を更に保護するものです。ケーブルを構成している素材や芯数が変わることによって許容電流が変ります。


電線とケーブルの違いは、一般的に導体の周りの絶縁体をシースで覆ってあるかいないかの違いです。
ただしこれらは便宜的に区別されているものであり、「電気設備に関する技術基準を定める省令」の第1条の定義では、ケーブルも電線に含んでいます。
また、制御盤で使用するのは電線が多く、ケーブルはあまり使用しません。

制御盤で使われている電線とケーブルの種類

制御盤の配線として電線やケーブルのうちで、主に使われているものをご紹介します。

電線

IV(ビニル絶縁電線)

IV(単線)

接地用の電線や、一般電気工作物・電気機器用配線・建築物内配線・制御盤内配線・スイッチ・コンセント類の渡り線一般に広く使用されている屋内電気配線用電線。
一昔前の制御盤にはIV線が使用されることが主流でした。素線はより線ですがやや太く、硬めの電線です。(単線もあります)
現在はKIV線の方が主流となっています。定格電圧600V、定格温度60℃となっています。

KIV(電気機器用ビニル絶縁電線)

KIV

耐油性、耐水性、耐熱性、可とう性、加工性、また着色性等に優れており、環境に配慮した、絶縁体に鉛を含まない塩化ビニルコンパウンド(非鉛)を使用した電線です。
Kは可とう性(柔軟性)を表す。主に制御盤配線として使われることが多い。
IV電線との主な違いは、素線構成です。素線そのものがIVよりも細く、柔らかめの電線です。
ダクト内に収めて使用するときにはIV線よりもKIV線のほうがいいでしょう。
現在の制御盤ではKIV線が主流となっています。定格電圧600V、定格温度60℃となっています。

KV(電子・通信機器用ビニル絶縁電線)

KV

100V以下の電子・通信機器の内部配線として使用される。PLC(シーケンサ)のような低電圧・低電流回路の接続に用いられる。

WL1(600V架橋ポリエチレン電線)

WL1

WL1とは日本鉄道車両工業会(JRIS規格)に規定されている車両用600V架橋ポリエチレン電線のことです。
メーカーによって名称が異なり 日立金属(旧日立電線)ではMLFC、 古河電工はLMFC、 フジクラではLMCFと呼ばれています。
耐熱性、難燃性、可とう性、耐寒性に優れています。許容電流が大きく取れるため電線のサイズダウンができ、コンパクトなスペースでの配線が可能となり軽量化にもつながります。
車両の電気配線はもちろん、配電盤、制御盤等の内部配線、モーター用口出線として使用されます。
※理論上はWL1を使用すると1サイズダウン可能ですが敷設状況により異なります。

ケーブル

シールドケーブル

シールドケーブル

アナログ信号などの微弱な信号を扱う場合、シールドケーブルを使用します。
シールドケーブルは、絶縁被覆とシースの間に編組シールドと呼ばれる金属線の網が入っており、これによりノイズの影響を受けにくくしています。
DC0-10V、DC1-5V、DC4-20mAなどのアナログ信号ではシールドケーブルを使用してノイズ対策をしておきましょう。

ツイストペアケーブル

ツイストペアケーブル(シールド有)

ノイズ対策(シールドケーブル、ツイストペアケーブル)
特に低電圧低電流の信号では、誘導での低い電圧でも誤作動の原因となってしまいます。
電線を2本対で撚り合わせたケーブルで、ノイズの影響を打ち消す効果があります。そのため、ツイストペアケーブルでノイズを打ち消しあうこと、シールド付きで影響を受けにくくすることでノイズ対策をします。メーカーによって型式が違うので注意が必要です。

現在ではIoT化が進み、通信用LANケーブルなども使われるようになっています。

LANケーブル

電線の太さと許容電流について

電線は太さによって安全に流せる電流値が変わります。
細い電線に大きな電流が流れると、電線は温度が上がって燃えてしまいます。
流す電流値から電線の種類、電線の太さを決めていきましょう。
電線の種類によって、同じ太さでも流せる電流値は変わりますので注意しましょう。

エコ対応品

エコ対応品とは、EM電線、EMケーブルと言われています。EM=Eco-Material(エコマテリアル)
被覆に使用する材料に有害物質を発生するようなものを使用しておらず、リサイクルに適した材料を使用しています。また、難燃性であり、煙発生量も少なくなるようになっています。
エコ非対応品に比べて値段が高いことが難点かもしれません。
仕様で「エコ対応品」の指定があった場合は、EM電線、EMケーブルから選定しましょう。

配線の注意点

制御盤の配線

制御盤の配線はスペースが限られています。その中で電線に負荷をかけずに配線することが大事です。電線に負荷がかかると、発熱などのトラブルにつながります。
例えば、硬めの電線の場合、電線を機器に合わせて先に曲げ、クセを付けてから端子を圧着する等、工夫が必要です。端子を圧着してから電線を曲げた場合、バネのように反発する力が発生し、機器の端子部や取付部に負荷をかけてしまうことがあります。
同じ作業でも状況により作業の順番を変える等、少しの工夫で、耐久性や安全性に加えメンテナンス性も向上させることができます。

マークチューブ

制御盤内では必ずと言っていいほど、マークチューブが使われます。マークチューブには配線の番号(線番)を印字し、各電線に通します。マークチューブを使用する事で配線作業のミスを減らし、メンテナンス性を向上させることができます。また端子圧着部の絶縁にも使われます。 
またマークチューブの向きですが、端子台への配線の場合、指定がなければ基本的には写真のように上下の場合は下から読む向きで入れていきます。
左右の場合は左から読む向きで入れていきます。これは決められたルールではないので自由に決められますが、他の人が見たときに分かりやすい事が大事だと思います。一つだけ線番が逆向きになったりしないように、向きは統一しましょう。

マークチューブ

いかがでしたか?主に制御盤に使用する電線、吉村電機で使用頻度の高い電線についてお話していきました。メーカーによって多少差があるものの、だいだいこちらに書かれている内容を把握しておけば、選定に迷うこともないでしょう。また配線の注意点に関しては実践で役立つコツなども書かれているので、ぜひ参考ししてみてください。ではまた!